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「きめ細かいサービスを提供できるのが日本の強み」
落合陽一が語るネットの未来

公開日:2021年3月16日

落合 陽一(おちあい よういち)

メディアアーティスト。東京大学大学院博士課程修了、博士(学際情報学)。筑波大学デジタルネイチャー開発研究センター長、准教授・JSTCRESTxDiversityプロジェクト研究代表。Prix Ars Electronica、SXSW Arrow Awards、MIT Innovators Under 35 Japanなど受賞多数。写真家・随筆家など、既存の研究や芸術活動の枠を自由に越境し、探求と表現を継続している。

情報通信技術の発達により、新たなトレンドが日々生み出されている昨今。日常生活でも、スマートフォンやPCからインターネット接続すれば、Googleなどの検索エンジンやYahoo! JAPANなどのポータルサイト、TwitterやFacebook、YouTube、LINEなどのソーシャルメディア、Amazonや楽天などのECプラットフォームなど、さまざまなサービスを利用できる。このようにオンラインプラットフォームが多様化し、進化し続ける中で、今後私たちはどのようにデジタルサービスと向き合っていくべきなのだろうか。メディアアーティストであり、研究者としても第一線で活躍する落合陽一さんに、デジタルの進歩によってもたらされる「社会の未来像」について語ってもらった。

落合陽一のインターネット体験

――さまざまなソーシャルメディアが生まれ、私たちの生活に定着していますが、落合さん自身は普段からどのようなサービスを利用しているのでしょうか?

Twitter、Facebook、Instagram、YouTube。LINEもそうだし、ちょっと前からはClubhouseでの配信もしています。あとはnoteとLinkedIn、TikTokは見るだけですが一応アカウントは持っていて、8つ以上は使っていますね。

――幅広くソーシャルメディアを活用されているんですね。

それはメディアによって、処理の仕方や見る人の態度が違うからです。写真と動画と文章が違うように、Instagram、YouTube、noteも別のものとして使っていますね。

――情報収集はどのようにしていますか?

例えば採用面接をする時は、LinkedInとFacebookを調べたり、Twitterでその人のアカウントを検索してみたり。論文を調べる時はGoogleを使って、足りなければACM Digital Libraryとか、いわゆる論文サーチで調べることもあります。地震とか海外のクーデターとか、リアルタイム情報はTwitterで検索して調べることが多いですね。(ドナルド・)トランプの「Be There. Will Be Wild!」の時も、AP通信やロイター、CNNと同じ速度でTwitterに投稿されていて。もちろんGoogleでも調べればリアルタイムで出てくるけれど、検索結果に出てこない情報もある。だからTwitterが一番調べやすいですね。英語の情報でも、ボタン一つで翻訳できるし。

――今では顔を合わせることなく、離れた人ともテキストや音声、映像を共有し、コミュニケーションを取ることができます。一方で、それでも公私問わず対面してコミュニケーションを取る文化はなくならないと思うのですが、両者における違いはどこにあると考えますか?

話す内容が決められているか、そうでないかです。僕が出演しているNewsPicksの「WEEKLY OCHIAI」というライブドキュメンタリー番組では海外出張していた時を除いてオンラインでの出演はしていません。エンターテインメント的な側面があり、毎回なにをやるか決めていない偶発性をはらむ場だからこそ、会って話さないと調子がとりにくい。一方で、「news zero」は決められた時間内で話す内容も決まっているから、オンラインでも全然困らない。そう考えると、儀礼的な会議のほとんどは対面じゃなく、オンラインでいいですよね。大学のインプット型の講義もそう。一方で、ブレストする時とか、演習系の講義は対面じゃないと結構大変で。新しいアイデアを出したい時も、対面がいいと思います。

日本の課題は? オンラインプラットフォームのあり方

――今回ヤフーとLINEが経営統合しましたが、サービスのブランドとしての課題はどこにあると思いますか?

経営統合の前でも後でも、課題は「フォーマルな存在」になれるか。例えばメッセージを伝える時、EメールもLINEも電話も、伝えられる情報は大体同じですけれど、どれが一番かしこまって映るかと言ったらメールか電話になる。LINEでとなると、ちょっと緩い感じがしませんか? ITはブランドなので、Messengerで連絡を取るのがクールか、LINEで連絡を取るのかInstagramのメッセージなのか。そういったイメージを持たせられるかどうかが大切。なぜEメールが今の位置に行けたかというと、単純に古いものだからです。特定の企業のイメージが薄いのも要因でしょうか。ヤフーとLINEが経営統合して次のプラットフォームになるためには、Eメールくらいフォーマルの場で通用するブランドを作れるかどうかが、今後の課題になっていくと思います。

――クールか否かという課題は、日本のITサービスの多くに言えそうです。

本当は全部ただのプラットフォームだからそんなに色はつかないはずなのに、日本の場合はだいぶ色がついてしまっていて、ブランドイメージの方が強くなってしまうんですよ。電子マネーサービスもそう。「メルペイでいい?」って言われたら「キャッチーだね」って思うし、「LINE Payでいい?」って言われると「庶民派だね」って。でも「PayPalでいい?」って言われても、パッと色が浮かばない。

――なぜ色がつき過ぎてしまうのでしょうか?

日本の場合、遅れているのではなく、浸透が早過ぎて発酵してしまう。それがつまり「色がつく」ということであり、弱点であると言えます。だから、海外の無色透明のプラットフォームに負ける。これはいつものパターンで、mixiもコミュニティ性が高まりすぎてFacebookにやられた。ニコニコ動画も、いつの間にかニコニコ動画のにおいがする人しかいなくなってYouTubeに負けちゃう。どれもいいサービスなんですけどね。

――日本のITサービスで、「いいな」と感じるところはありますか?

日本のITサービスって、きめ細やかですよね。ヨーロッパやシリコンバレーの場合、割ときれいなユーザーインターフェースでまとまっていて。使う時は自己責任で、ほとんど自動化で済ませる。中国のITサービスの場合は、「個人情報」と「自由」と「社会」の関係性をしっかり考えなきゃいけない。そういった他国のITサービスと比べると、日本は自由市場でありつつも結構丁寧で、世話焼きなサービスという感じ。それがさっきの「色がつく」に関係しているのかもしれませんが。

――その特徴は、世界に対抗できると思いますか?

できると思いますよ、いわゆる「おもてなし」です。GAFAMをはじめ、全てのテックカンパニーはブランドですからね。ヤフーとLINEが社会にどうアプローチするか、フォーマルな存在になれるかなど、ブランド価値をどう上げていくかの方が、実はサービス自体の利便性よりも重要だと思います。

コロナ禍で感じたリモートの可能性と課題

――落合さんは2021年2月に香港で展示をされました。今回はコロナ禍の影響で、リモートで設営をされたそうですね。

なかなか大変でした。まず、インスタレーションの展示会なのに現場に行けない設営って、ラーメン屋を出店するのに店主がいないみたいな状況ですから。アートの設営は、結構丁寧にやらなきゃいけなくて、現場でプログラムを書いて調整することもある。だけどそれができないから、日本で書いたものをそのまま持っていくしかない。現地で直せないから、触れるような立体物も置けないし、回線があるかもわからないから、基本的に設定はオフラインで作るわけです。

――それでも展示空間はちゃんと完成されたと。

「あ、行けなくてもできたな」って、結構びっくりしました。実際に現場へ行ったら、クオリティは完璧ではないと思いますが、動画で見る限り普通にできていて。これなら世界のどこでも展覧会が開催できると思いました。今後もそれをやってみようかなと、少し考えています。

――コロナ禍に見舞われたことで、仕事も学びも、工夫次第ではオンラインでもできると気づかされました。デジタルの進歩の先に、どういった未来があると思いますか?

いろんなことがオンラインでできると多くの人が知った今でもまだ、みんな場所に縛られすぎだと思っていて。例えば大学でも、授業がリモートで完結する日が何日かまとまってあるわけですよ。そうしたら学生さんたちは別に家にいなくても、温泉宿とかで過ごしたら? と思うんです。緊急事態宣言とは関係なく、半月ぐらいどこにいても授業が成り立つ場合でも、意外と家から出なかったりする。僕は好きだから家にいるけれど、外に出るのが好きな人も家にいる。どこに住んでもいいって言われた時に、本当にどこに住んでもいい状態になれる人は、すごく少ないです。

デジタルが発展していく中で、固定観念をどう捨てていくか

――デジタルが進歩しても、それを使う人間がなかなか変化できない状況は続くのでしょうか?

人間の生活習慣は急には変わらないかもしれないけれど、変化の兆しはあります。意識が早い人から、いろいろな所に住み始めている気がするし。その代わり、オンラインの仕事が増えて移動時間がなくなっていくと、時間が細切れになって忙しくなっていく人もいるかも。

――落合さんは「華厳(けごん)の思想」をベースに作品を作っていますが、そのアーティストとしての思考が社会の多様性を育もうとするアプローチにもつながっていると思います。今後もさまざまなサービスが生み出されていく中で、あらゆる人が活用できるようになるためには、どのようなマインドが必要だと思いますか?

社会に無為自然性を求めるには、社会システムの規律なき規律化が必要だと思います。トランスフォーメーションは、生物の根源な気がしていて。あらゆるものが変換されて回っていくというのは、情報サービスのあり方で、その中で新陳代謝が起こり、形が変わる。そしてその新陳代謝が速いのが今の世の中です。こういった状況で、ある種の固定観念をどうやって捨て、バイアスなくどう生きるか、もしくはバイアスを自覚しながらもどう生きるかが求められていると思います。

取材・文:宇治田エリ 編集:井上良太(シーアール) 撮影:AIT

落合 陽一(おちあい よういち)

メディアアーティスト。1987年生まれ、東京大学大学院学際情報学府博士課程修了(学際情報学府初の早期修了)、博士(学際情報学)。筑波大学デジタルネイチャー開発研究センターセンター長、准教授・JSTCRESTxDiversityプロジェクト研究代表。IPA認定スーパークリエータ/天才プログラマー。2017年〜2019年まで筑波大学学長補佐、2018年より内閣府知的財産戦略ビジョン専門調査会委員、内閣府「ムーンショット型研究開発制度」ビジョナリー会議委員、デジタル改革法案WG構成員、文化庁文化交流使、大阪・関西万博テーマ事業プロデューサーなどを歴任。Prix Ars Electronica、SXSW Arrow Awards、MIT Innovators Under 35 Japanなど受賞多数。写真家・随筆家など、既存の研究や芸術活動の枠を自由に越境し、探求と表現を継続している。
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